Happy Hallowe'en de 前夜祭
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。

  


いつもの例年であるならば、
どんなに厳しい残暑が長引こうと、
何とか流星群の極大を迎えると同時、
がくんと寒いくらいの気温となって。
やれ風邪を拾ってしまったの、
やれ今時分用の上着を出してなかっただのと、
バタバタと慌ただしくも
秋への装いが街じゅうを塗り替えるところだが。

「おしゃれに我慢は付きもの、ってでしょうかね。」
「おしゃれというより、流行りもの、あやかりものでしょうに。」

いわゆるハロウィンの訪のいを待ちきれずのことだろう、
夜更けの繁華街なぞで怪しいコスプレした若者が徘徊を始めており。
魔物を追い返す趣旨のはずだが、
単なるキャラのコスプレが多いのは気恥ずかしいからか。
それを言ったら、正当なハロウィンは10月31日の晩だけの催しのはずで、

「そういうこと踏まえてる人がどのくらいいるものやら。」

クリスマスだって、イエス様よりサンタクロースのことしか口にしない日本人ですしね。
それ言ったら お花まつりを日付も由縁も知らない仏教徒も
いっぱいいっぱいいるくらいイージーな国民性だけどもね、なんて。
いやに年寄り臭いというか批評家っぽい物言いをしている声がして。
聞えよがしというほど張ったそれじゃあないが、
うら若い女性の声だけに、
何だ何だ、インテリジェンヌのお通りかと
通りすがりの方々が声のする方を振り向けば、

「……。」×@

「あら、ごめんあそばせ。」
「体の幅が把握できておりませんの、すみません。」

自分たちへの注目へ、
ぶつかっちゃいましたか?と勘違いしたものか。
片やは頭を下げたか胴体部分がやや斜めになり、
片やはスカートの裾をつまんでの会釈のつもりか
胴体部分が横へと斜めになったのは、
どう見ても…

“キィーウィ?”
“キィーウィよね?”
“うん、キィーウィだ。”

まだ準備段階で完璧な装いではないものか。
着ぐるみの下辺から、制服のそれだろう濃い色のひだスカートを覗かせ、
足元はハイソックスに革靴という中途半端さながら。
悪のりコスプレを批評するよな物言いをしていた声の主らが、
なのに どういう被りものを着てますかと。
色々と突っ込みたいところ満載の、
アニメ調の目鼻をくっつけた楕円形のまんまる胴体もユニークな、
二人ほどのキィーウィ姉妹が
駅前商店街の大路を行進中だったようで。

“青果店の宣伝とか。”
“秋の大売り出しの呼び込みとか?”
“それらしいプラカードとかないぞ?”

いでたちの異様さより その在りようへの答えをなんとか見つけたいとする、
心優しい人が多かった、場所柄と時間帯だったようで。
やや遠巻きとなっての…本人たちへの問いかけはないままに。
時折幅が把握しきれていない胴体同士をぶつけ合っては跳ね返し合いつつ、
とことこと足早(?)に 商店街の通りを立ち去っていった南国果実姉妹だった。



     ◇◇


こちらの駅にほど近い、某 著名な女学園では、
毎年11月の初め、文化の日をまたぐようにして盛大な学園祭が数日間ほど催される。

「なんか、先週だったか、
 マリ―アントワネットが出没したらしいってよ。」
「なんだ、それ。」

繁華街のそれほどには派手ではないが、それでも沿線最寄りのガッコが増えてきた余波か、
学校帰りの若いのの中には、ちょっと悪戯やんちゃな輩もいて。
それが金離れの良さそうな子羊の多かろう土地と勝手に見越して、
駅周縁の物陰なんぞで、それなりに肩をいからせ、ガンを飛ばしてなくもない。
普段はさすがに、近隣の所轄署から警邏の人員も繰り出されての、
安寧な通学路を保持しているものの。
春の五月祭や秋の学園祭なんていうお祭り騒ぎの前後には、
定時の登下校の時間帯以外のそれ、
お友達と雑貨や差し入れの買い出しにと
ちょっとそこまで感覚で出歩くお嬢様がたも多いため。
そんな子羊を目当てに悪さを構えるクチが
大胆なんだか卑怯にもなんだか、
出没してしまう土地柄となりつつもあり。
先日も、買い出しに出ていた下級生を狙い、
恐持てじみた態度で脅し、所持金を巻き上げたり買ったものを横取りしたりという、
同世代くらいの、しかも女子という由々しき輩が出たらしく。
どっかの著名な不良が足場にしていると広まってた方が、
口コミに敏感な若いのの間では、案外 治安の維持には有効かも、
おいおいそんな本末転倒な…と。
大人たちの間でそんな余禄が取り沙汰されもしたとかいう話はともかく。

「ウチは購買でも自販機でも、
 スマホや携帯のチャージで買い物できる環境なんですけれどもね。」
「そうそう。」

商店街の買い物は勿論、そんな方面への小銭も要らないとあって、
あまり現金を持ち歩く人は少ないと。
お金目当ての恐喝をしても効果薄なのにネなんて言いようをしつつ、

「それにしても汗かいたねぇ。」
「うん。まだ体を動かすと暑いねぇ。」

そんなお暢気な会話を交わす、二人ほどの女子高生。
足元には今さっきまでかぶってたらしい着ぐるみがくたくたになって置かれてあり。

「…なんてカッコで歩いてやがるかな。」
「あら。警戒してみんな避けて通ってくれてましたのに。」

なんかよく判らないけど、人が来たから悪さはするまいよという反応か、
大人しそうなお嬢さんたちのグループを尾けかかってたクチの不良どもまでも、
チッと舌打ちしつつもササッと姿を消していたものが。
こんなややこしいのへわざわざ声を掛けて来たなんて、と。

「そっちこそおかしい。」
「馬鹿やろ、邪魔しくさるからシメてやろうって思ったんだろがっ!」

変なのはそっちだと指差されたのへ律儀に吠えた、
いかにもむさくるしい風体の不良っぽい輩たちだが、
その身は何だかよく判らないラバーの拘束紐で腕と胴とをまとめてくくられていて。

「……
「う…。」

すぐ傍らにいた、こちらはセーラー服姿の金髪のお嬢さんが、
ぎろりと睨めば…恫喝した勢いがたちまちふにゃりと萎えるのが判りやすい。

『こないだっから目障りなんだよお前らよ。』

顔を出して目を付けられるのは怖いからと、
そこでの仮装、単なる目撃者になる格好での見廻りのつもりなら。
きっと町内会の気弱なオヤジかおばさまだろから、
ちょいと脅してひょいひょい出歩くなとでも言い含め、
この辺りから追い払うつもりだったらしいのだが、

『おやまあ、目に障るほど目撃していたんですか。』
『どんだけ此処へお通いなんだか、ですねぇ。』

すくみ上がるどころか、そんな言いようを堂々と言い返し、
それは手際よくもするりと着ぐるみを割って脱いでの、その姿を現したのが、

『…げっ☆』

この地域と言えば…という思い当たりがなくもなかったが、
イイトコのお嬢様がふざけたキャラの被りものなんてやるまいと。
そういう とある人物たちへの“警戒”情報も実は広まってたらしいのが意外や意外。

 そう、ひょうきんな格好をしていたことから
 絶対に別な手合いだと踏んだら…

 地雷そのものだったわけですな。(大笑)

『な、何でそんな格好で…。』

わざとに恐喝させようとしてねぇか、そういうのっておとり捜査じゃねぇのかよと、
どっかで本物の警邏のお巡りさんにそんな理屈言って煙に巻いたことでもあるものか。
驚いたそのまま口走った手合いもいれば、

『やんのか、おい、ごらっ

そっちもそっちでどういう逆切れか、
一旦怯んだのが気恥ずかしいか、声を荒げて凄んで来たのもいたけれど、

『……っ。』

そんな彼らの背後に気配もなくの駆けつけていたもう一人。
こちらは…被りものを着させても、
不慮の事態への対応、事情を饒舌に語れまいと踏まれ、
平服モードのままで待機していた紅ばらさんが。
両手へジャキリと構えた警棒も勇ましく、
無言のままというのが、見ようによっては鬼気迫る迫力をおびての全力疾走。
お友達を4、5人で取り囲んでいた輩の群れへ“切り込み”をかけたから恐ろしい。
疾風のように駆けつけて、通り過ぎざまに胴の脾腹辺りを横薙ぎ一閃、
ほんの瞬時に全員の胴を払える的確な太刀筋は
バレエで鍛えたというよりは、過日の経験則が働いたからに違いなく。
そんな襲撃技とは別に、

『ひぃいぃぃ〜〜〜。』
『…久蔵殿、超振動まで発動させずとも。』

アクセの鎖やピアスなどなどが粉砕されてた顔ぶれもいたものだから、
それはやりすぎと七郎次が“メッ”と窘めたおまけさえ余裕の、
ここまで恐ろしい素人巡回警邏は、ともすりゃ反則技かも知れぬ。
痛撃と得体の知れない技への恐怖とでへたへたと座り込んだ顔ぶれを、
平八が取り出した拘束具で片っ端からお縄にし、
連絡を取った本来の警邏担当のお巡りさんがやって来るのを待ってるお嬢様がたで。

「よろしいか?
 この界隈での悪さをすると、
 痛い目に遭うだけじゃない
 そのドジを拡散されかねないってのもお忘れなく。」

「〜〜〜〜〜。」

一山いくらのほうれん草か、束ねられた姿を写メした画像をほれと見せられ。
今回はまだ“保留”としますが、
どっかで悪さの噂でも訊いたらば、
速攻でこれをインスタやつぶやきへ上げますからねと、
にんまり笑ってダメを押す、そりゃあおっかない3人娘。

「…またお嬢さんたちですか。」
「あ〜、佐伯さんそんな言い方はなし。」

相変わらずのやり取りが始まる、お嬢様学園の界隈へ、
どこかの庭から飛び立つ小鳥の気配がばたたとかぶった秋でした。






   〜Fine〜  16.10.31


 *今日こそがハロウィン当日ですが、
  もうすでにクリスマスのイベントCMとか流れてますよね。
  都心では一昨日と昨日という週末にホコ天対策とられたっていうし。
  …いつからそういうパーリーピーポーばっかになったんだかですね。

  そしてうちのお嬢様たちも、相変わらずの大暴れ。
  どこが見廻りか、もしかしてオトリ捜査かと
  相手に言われてりゃあ世話はなく。
  じわじわと有名な用心棒化しつつはあるらしいです。(それもどうかと)

めーるふぉーむvv ご感想はこちらへvv

メルフォへのレスもこちらにvv


戻る